思い出の映画紹介

『砂の器』

 「砂の器」は松本清張の長編推理小説が原作。
1974年に松竹で映画化され、映画館などで7~8回は見ました。家でもDVDで年に1~2回は見るのでこれまで何回見ただろうか。
野村芳太郎監督の不朽の名作だが、見どころの第1に脚本の素晴らしさにあります。橋本忍と山田洋次の脚本ですが、松本清張の原作も読みました。小説では若手文化人集団「ヌーボー・グループ」の人間関係なども描かれます。

主人公を若手音楽家・和賀英良一人に絞ったことがよかった。そして戦争で焼失した戸籍再生という制度を使って本名本浦秀夫が和賀英良になったこと。第2に殺された被害者が「東北弁のカメダ」と言っていたという証言から当初秋田県の羽後亀田を捜査するが、島根県出雲地方にも東北弁に似た方言があることが判明していくこと。

そして何よりも音楽が素晴らしい。音楽監督・芥川也寸志、作曲・ピアノ演奏・菅野光亮。自作の曲「宿命」を演奏しながらハンセン氏病のため村を追い出された本浦父子の巡礼の旅を思い出す和賀英良と捜査会議の場面が交互に映し出されるが、音楽によってグイグイと画面に引き込まれていく。
何度見ても見ごたえのある映画です。

河内長野支部 榊 洋一

2023.2.15 398号より