第二次大戦後のイタリア。混乱と貧困、将来への不安の中で懸命に生きる人々。 主人公アントニオは妻と6才の息子の3人家族。永い失業の苦しい生活の中で、アントニオはやっと映画ポスター貼りの仕事を手に入れる。仕事には自転車が必要だった。妻も喜び、家にありったけのシーツを質に入れ、自転車を質屋から請け出す。
翌日、意気揚々と仕事に出るが、仕事中にその自転車が盗まれる。が、警察は相手にしない。唯一の商売道具の自転車を息子と探しに街に出かける。その姿を通し、監督ビットリオ・デ・シーカは戦後イタリアの混乱の姿をリアルに映し出す。西部劇や時代劇など、それまでに観てきた多くの映画で、強く、運のいい主人公にはらはらドキドキさせられながらも最後はハッピーエンドで終わり、帰り道では主人公気取りで気持ちよく帰っていったものだった。
しかし現実の甘くない厳しさを見せられた時、人々は何をどう感じるのだろうか。
出演の父子は全くの素人を起用しネオ・リアリズムの存在を世界に知らしめたイタリア映画の秀作。私にとってもリアリズムとは何かを教えてくれた№1の作品です。(1950年製作)
吹田支部 堀 健次
2023.5.15 401号より