思い出の映画紹介

「映画が恋した音楽家 モリコーネ」

 この映画はエンニオ・モリコーネの作曲の秘密に迫ったドキュメンタリーである。私がモリコーネの名前を知ったのは高校生の頃。テレビで「荒野の用心棒」の予告編が流れて、腰高の拳銃のグリップが大写しになり、次の瞬間、イーストウッドが4人の敵を見事な早撃ちで倒すというシーンに圧倒され、画面に流れる「さすらいの口笛」にしびれた。そして、そのあとに続く「夕日のガンマン」「続・夕日のガンマン」の音楽は従来のハリウッド西部劇とは全く異なったものだった。

映画はモリコーネが担当した名画・名曲のハイライトシーンを次々と展開してゆく。心臓の鼓動を刻むような「アルジェの闘い」の音楽。「アンタッチャブル」ではエリオット・ネス役のケビン・コスナーの若さに驚く。駅構内での銃撃戦の最中に赤ちゃんを乗せた乳母車が階段を落下してゆくシーン。ニューシネマパラダイス」の甘美な旋律とともに画面いっぱいに広がるトトの笑顔。もうたまりません。

ドキュメンタリー映画は時として冗長になりがちだが、この作品は音楽の専門知識のない私でも全く飽きることなく見ることができた。「ニューシネマパラダイス」を作ったトルナトーレ監督のうまさだろう。

ビデオレンタル店の棚に並ぶかどうかだが、音質のきれいさ、大スクリーンの迫力、やっぱり映画館で見てほしい作品です。

富田林支部 菊井 康雄

2023.6.15 402号より