思い出の映画紹介

『カティンの森』

 1943年4月第2次大戦中「モスクワ近郊カティンの森でポーランド人2000人余りの虐殺遺体を発見」と、ドイツ軍が発表した。当時ポーランドはソ連とドイツ両国から攻められていた。これはドイツ軍がソ連に罪をかぶせるためにやったことだと、ドイツ軍はソ連軍の仕業だと、互いになすり合いをし、真相は長く伏せられた。(50年後の1990年ソ連軍の犯行であることを認めた)

この事件をベースに、夫(少将)に手編みのセーターを持たせて戦争に送り出した主人公が、ずっと無事を祈りながら帰りを待ち続ける。やっと戦争が終わって夫を駅に迎えに…。ところが夫は戦場で、妻の編んでくれたセーターを風邪を引いた友に着せたために、友と間違えられて、虐殺されてカティンの森に埋められてしまっていた。というストーリー。

もう20年も前に観た映画なのに、今も忘れることができない映画である。監督のアンジェイ・ワイダ氏自身も父親が「カティンの森」の被害者だそうで、この虐殺事件をこのまま埋もれさせないという強い思いが映画作りへ向かわせたのだろう。戦闘シーンが一度もないこの映画、主人公(妻)の切ない思いがひしひしと胸にのしかかる。現在ロシアのウクライナへの侵略が長引く中、一日も早くこの戦争が終わる事を願わずにはいられない。

私は戦後生まれだが、この映画が伝える「決して戦争はしてはならない!」という思いをいっそう強くしている。
(2007年製作 ポーランド映画)

豊中支部 奥村 登志美

2023.7.15 403号より